表紙に書いてある「映画オデッセイの原作」というのを見て、あああの軽薄そうな宇宙飛行士の話か・・、とテレビで放送されていた予告編を思い出して借りるのをやめようと思ったのですが、他に借りたい本も無かったし次の予定も迫っていたので、つまらなければ直ぐに返せば良いと思い直して借りてみたのです。
ところが、読み始めてみると、これがすごく面白いのです。
さすが世界的ベストセラーだけのことはある、と思いました。
テレビの予告編から受ける印象は、ディスコ音楽を騒がしくずっと鳴らしながらお気楽に火星で生活する不時着した宇宙飛行士の話、という感じでしたが、たしかにこの宇宙飛行士は物事を深刻に考える性格ではないものの、それはそれは真剣に(当たり前ですが)生き延びるために自分の持てる知識と技術を総動員して必死に地球への帰還を目指します。
あの予告編は誤解を与えます。
その性格から、おちゃらけを頻繁に言うものの、踏み外さない程度に作者がコントロールしているのでバカっぽくはなりません。ギリギリですが。^^
また、色んな所でセンスの良さを感じます。
たとえば、アメリカが補給物資のロケット打ち上げに失敗し、これでジエンド(餓死)かと思ったら、中国が代替ロケットを提供してくれることになったので、その打ち上げ準備のためにNASAの高官が中国の打ち上げ基地に行ったとき、「コントロール・センターのようすは、おどろくほどにヒューストンそっくりだった」と、サラッと言わせているところなど、思わずニコッとしてしまいます。
この小説に中国は出てきますが、日本は出てきません。
外国から見ると今はもうそうなんだろうなーと思いました。
これが現実ですね。
で、話は途中で飽きさせることもなく、最後に向かって盛り上がっていって終わります。
読後感が非常に良いです。
SFを読まない方にもお薦めしたい本でした。
ps
「酸素が無くなってしまったら苦しんで死ぬけど窒素100%にしてしまえば楽に死ねる」と書かれているところは間違いだと思うのですが・・・。
どちらも単なる酸欠なので、苦しみは同じかと。
苦しまない方法は、温泉の臭いの元である硫化水素を高濃度で一気に吸い込んだとき、と聞いたことが有ります。硫化水素は、脳が苦しいと感じるよりも早く脳機能を破壊するため、苦しいと感じる前に死ぬのだそうです。
(でも本当かどうか分からないので試さないで下さいね。死ぬほどの苦しみを味わってから死ぬかもしれませんので。^^;)
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