都響の番組でも運命の最初が難しいと解説して嫌だった話

TOKYO MXというテレビ局が放送している「アンコール!都響」という番組では、演奏を流す前に都響のマネージャーのような方が曲の解説をします。

 

昨日放送された曲はベートーベンの交響曲5番運命でしたが、ご多分にもれず、第1楽章の最初のダダダダーン!の指揮者の振り方とオケの合わせ方が難しいんですよと言っていました。

 

以前のブログにも書きましたが、こんなことを言っているのは日本だけじゃないでしょうか。

まったく不合理です。

 

海外の巨匠指揮者のビデオを見ると、必ず前振りをしていますし、先日放送されたN響・ヤルヴィもこっそり前振りをしていて照れた顔を団員に見せていました。

 

なぜ運命の出だしは前振り無しで振らなければならないとなっているのでしょうか。ホントに不思議でなりません。

 

前振り無しでも何もおかしく無いんじゃない?と思った方は、実際にご自分でダダダダーン!と振る格好をしてみて頂くと実感されると思いますので、どうぞ試して頂きたいです。

前振りを完全に無しで振るのは、生理的に極めて不自然であることに気が付かれるでしょう。

人に合図をするのですかた、この小節を振る前動作として自然に1拍に相当する動きを体がしてしまうのです。なのでほとんどの指揮者は前振りし、かつオケも前振り無しでは合わないのでそれに従って演奏しているのです。

 

昔、指揮に合わせて運命をピアノで弾いたことがありますが、ピアノという1人で弾く楽器でさえ、指揮者が前振りをしないと指揮に正確に合わせて弾くことは出来ませんでした。

なのに60人くらいの弦楽器奏者(とCl)が一斉にジャジャジャジャーンと演奏するオーケストラで正確にピタリ!と合わすのは無理だと思います。(余談ですが、運命は非常に美しかったです)

 

テレビには映りませんでしたが、昨日の都響を指揮した小泉氏も99.9%前振りしていると思います。

テレビでは舞台に出て来た小泉氏をずっと客席方向から映し続けた後、曲の1小節目のピッタリ頭の部分が始まる瞬間から小泉氏を正面から映した映像に切り替えていました。

このやり方はNHKが放送したヤルヴィのときと全く同じです。

 

ヤルヴィが前ぶりをしていることはNHKの別のカットでそれが流れたのでバレたのですが、指揮者が前振り無しで運命という曲を開始することを、聴衆のどれくらいが期待しているでしょうか?

私は限りなくゼロ%に近いと思っています。

客は指揮者を背中側から見ているので、前振りをしようがしまいが見えないので意味が無いからです。

 

なのに、なぜか「前振り無しで振るので緊張感が出て良いのだ」という神話が日本には定着していて、誰がそれを広めたのかは知りませんが、いまだに指揮者もオケも運命を演奏するときはあたかも前振り無しだったかのように振舞うことがお約束になっているように思えます。

 

この神話は、ずっと昔のクラシック音楽入門!的な番組で、知らない人への受け狙いで言ったのが定着してしまったのではと推測するのですが、どうでしょうね。

ハッキリ言って意味が無いのでもうやめたらと言ってあげたいです。

キッチリと前振りをして良い演奏をしてくれた方が、よほど良いです。