演奏中に聴衆の気持ちが動いたことの分かる不思議

NHKクラシック倶楽部でユリアンナ・アヴデーエワのショパン・ピアノソナタ3番の再放送がありました。この演奏は私のお気に入りで永久保存版です。

 

この人は数年前のショパンコンクールで1位になりました。

昨年2位を受賞して話題になった反田恭平さんも先日のテレビ放送でこの曲を弾いていたので、それを思い出してつい較べてしまいましたが、申し訳ないけれど、ものが違うと痛感しました。

 

アヴデーエワの演奏を聴くと、反田さんは2位を受賞したといってもまだまだ日本人の特質とも言える単純で平板な表現から抜け出られていないと強く感じます。

反田さんファンには叱られそうですが、反田さんは優勝するために徹底的に戦略を練ったそうで、その成果で2位になったのではないかと思います。

なぜなら、演奏を聴いていて感動しないからです。

極めてドライ。まだ心からの演奏ではないように聴こえてしまいます。

もちろん私の感受性が反田さんと合っていなくてそう思ってしまうのかも知れませんが・・。

 

と前置きが長くなってしまいましたが、アヴデーエワが上記の番組の中で「私の好きな音楽を通じて観客の皆さまと通じ合えることが嬉しい」と言っているのを聞いて、以前リコーダーを吹いていた時に似たようなことが有り不思議だなーと思ったことが有ったので書くことにしました。

 

アヴデーエワの言っていることとは少し違うかも知れませんが、吹いている時に先生や観客の心の動きが分かるときが有るんですよね。おそらく皆が経験しているのではないかと思いますが。

 

1つ目は、初めて入った朝日カルチャー湘南のリコーダー教室のレッスンで、田舎の??という曲だったか、または別のもう1曲だったかの、どちらにしても分かり易い現代の曲を渡されて初見で吹いていた時に、それまで臨時記号は#ばかりだったのに突然♭がレやソなどに連続して付いて出て来て、オッと思って一瞬つまづいたのですが、その時に高橋先生が心の中で「ウフフ、やはりやったね」と思われたのがピーンと伝わって来たこと。

 

2つ目は、その教室が鎌倉駅前の公民館のような所で行われたリコーダーの集いで吹いたときのことで、担当していたアルトパートが徐々に盛り上がっていくメロディーラインをソロで吹く箇所があったのですが、盛り上がった頂点で最も大きく吹くのではなく、逆にスッと瞬間的にP(ピアノ)にして吹いたところ、観客がオオッと息を飲むのが分かったこと。

 

3つ目は、近江楽堂でバッハのバイオリンソナタ3番を吹いたときのことです。

出演者はどんな曲を吹くのか分かるように先生に事前に楽譜を渡していたのですが、第4楽章に何度も出て来る3連符の跳躍の中の吹き難い1箇所を、(たまたま)難なくスッと吹けたときに、客席に座って楽譜を見ながら聴いてらっしゃった細岡先生が「あっ、行けた!」と思われたのが吹いていて分かったこと。

 

4つ目は、池袋のストゥディオ・フォンテガーラのミニ発表会でバッハのチェロ組曲3番のプレリュードを吹いていた時に、曲の中間に出て来る美しいアルペジオのところで、前に座っている方が「きれいだ!」と思われたのが伝わって来たこと、です。

 

こういうのって、不思議ですね。

 

どんな楽器のプロ奏者でも、演奏するたびに聴衆の反応をヒシヒシと感じながら演奏されているのでしょうね。やりがいのある仕事だなと思います。

 

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アヴデーエワが弾くショパンのピアノソナタ3番第3楽章の中間部